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[20060831]

You're Under Arrest You're Under Arrest
Miles Davis (1989/08/02)
Sony Jazz
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マイルス復帰後で一番ポップなアルバムです。これ以前の復活作品の方がまだジャズらしかった。80年代で数少ない功績としてスクリッティポリッティによる立体的なアレンジがあります。一つのグルーブを生み出すのに、部分的に分解して各楽器に分散する事によって立体的な音構築による一つのリズムを創り出すものです。マイルスもそれが気に入り、スクポリのアルバムに参加などしております。私も当時はその手法を取り入れて一生懸命作曲活動しておりました。しかし、現在の耳で聞くと、それは既に使い古されたものであり。時代遅れ以外の何ものでもありません。そんな音が充満しているこのアルバムも時代遅れな感じでしか今は聴けません。 

1. One Phone Call/Street Scenes
2. Human Nature
3. Intro: MD 1/Something's on Your Mind/MD 2
4. Ms. Morrisine
5. Katia Prelude
6. Katia
7. Time After Time
8. You're Under Arrest
9. Medley: Jean Pierre/You're Under Arrest/Then There Were None

しかもかなりポップ、メロディーをしっかり演奏しているマイルスも珍しいです。特にマイケルジャクソンのHuman NatureやシンディーローパーのTime After Timeなどの選曲は、いかにマイルスが時代に盲目にさせられていたかが伺えます。One Phone Call/Street Scenesでの軟弱なアレンジもひどいですが、警官とのやり取りの喋りが入っており、警官役をスティングがフランス語で参加しております。MD 1/Something's on Your Mind/MD 2はもろスクポリしております。これらで使われているシンセの古くさい事。シンセドラムなどを使うダサさも追い打ちをかけています。

この時代のマイルスはどうもシティージャズという傾向があります。それはそれでかまいませんが、音使いだけはどうにかならないものか。ニューヨークをフェラーリで駆け抜けるマイルスですが、黒人がフェラーリなどに乗っていたら盗難車だと決めつけられ、よく職務質問されていたようです。それなどが題材になっているのが一曲目です。ミュートの枯れたトランペットの音色は確かにニューヨークの町並みに合いますが、もう少し渋さが欲しかったです。これほど愚直にポップだと拍子抜けしてしまいます。

しかし、一番ポップスよりなアルバムですので、ジャズが苦手な方はこのアルバムから聴いた方が良いかもしれません。マイルスこそがジャズの生きた歴史ですから、その事については一つもゆるぐものはありません。

Human Nature

Katia

Time After Time
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[20060830]

Decoy Decoy
Miles Davis (1990/10/25)
Sony Japan
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このアルバムから徐々にメンバーに変動が起こり始める。Miles Savis(tp,syn) Darryl Jones(elb) Al Foster(ds) Mino Dinelu(per) Bill Evans(ss,ts,fl) John scofiekd(elg) Robert Irving(syn) Branford Marsalis(ss) Gil Evans(arr)というラインナップである。これまでの復活作品に比べると、斬新なアレンジが多くなった。音使いだけをもっと気をつけていてくれれば素晴らしい作品に仕上がった事でしょう。しかし、やはり80年代特有のチープな音使いの罠に落ち入っている。

1. Decoy
2. Robot 415
3. Code M.D.
4. Freaky Deaky
5. What It Is
6. That's Right
7. That's What Happened

まずDecoyの構成が面白い、マイルスもかなり復調したように吹き捲くっている。しかし、如何せんシンセの音だけは頂けない。What It Is もバリバリのチョッパーベースがノリノリのファンクナンバーだが、シンセだけは古くさい。わるい意味で古くさいのだ。他にも選択肢はあっただろうに


That's Rightはウェザーリポートがやるようなジャズっぽい曲で、スコフィールドのブルージーなギターソロが聴きものです。しかしこの物足りなさは、マイルスがもう精神的なオルガズムを抑揚させようという野心が失せたという事でしょう。シティー派ジャズとしてのオシャレなマイルスがここにはいます。そして新しい事をやろうという意思は感じられますが、現在の耳には古くささしか感じられません。Gil EvansアレンジのThat's What Happenedが以外にもファンクジャズだったのが驚きです。あまり彼らしいボイシングは感じられません。シンセの音色だけは付け替えて欲しいものです。

[20060830]

納豆健康食のため最近見直されております。しかし臭いが駄目で好き嫌いが分かれる食品でもあります。私は大好きで、毎日でも食べております。

しかし納豆にもいろいろと種類があり、メーカーなどでも味が違ったりします。基本は新鮮なほど美味しいという事です。納豆嫌いな人は「納豆に新鮮もクソも無い、腐っているじゃないか」と言います。しかし納豆は腐っている訳ではありません。発酵食品なのです。その為、多くの旨味成分、グルタミン酸や体にいい細菌が含まれております。血液さらさら効果もあります。納豆嫌いは食べず嫌いなのでおおくの誤解を生んでいるようです。

結論ですが、新鮮な納豆は旨い。大粒よりも小粒が旨い。好き嫌いもあるかもしれませんが、私はそう思います。しかし、ひきわり納豆は良くありません。新鮮じゃないのです。臭いものが多いです。納豆嫌いの原因は新鮮じゃないものを食べたのじゃないでしょうか。ひきわりは粒として商品にならなかったものを寄せ集めたものです。旨い訳がありません。

又かき混ぜて、よく粘るものほど美味しいです。粘りが悪いものは美味しくありません。いろいろ試しに買って比べてみて下さい。かき混ぜ方は、基本はまず納豆だけを良く粘りが出るまで混ぜます。そこへ薬味のネギを入れてまたかき混ぜます。そして醤油、辛しを入れて混ぜます。好みで卵の黄身を入れても美味しいです。最後に又良く混ぜます。てがくたびれるほど混ぜます。あまり混ぜない人もおりますが、納豆の本当の旨味を知らない人のする事です。

後はご飯にたっぷりかけて、ガバガバッと食らいつきます。これが旨い食べ方です。おかずとしては魚類が合うようです。特にさんまの塩焼きはたまりません。その為、鰹節を入れても美味しいです。マヨネーズを入れる人もいますが好きずきでしょう。ヨーグルトやキムチに負けない日本の栄養食ですので薬だと思って皆さん食べまくりましょう。

[20060829]

Star People Star People
Miles Davis (1993/09/01)
Sony
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マイルス復活第二弾スタジオアルバムになります。結構ロックよりで混沌とした感じも出しておりますが、やはり80年代の音になっております。メンバーは Bill Evans (saxes), Al Foster (drums), Marcus Miller (bass), John Scofield (guitar) and Mike Stern (guitar)でジョンスコフィールドが加入しているのでそれなりに楽しめるアルバムです。

1. Come Get It
2. It Gets Better
3. Speak
4. Star People
5. U 'N' I
6. Star on Cicely

シンセの音色とシングルコイルのエレキの音が、いかにも80年代しております。当時は流行だったので仕方ありませんが、マイルスがこれで良しとしているところが情けないです。70年代も最新のファンクやサイケロックを取り入れておりましたので、80年代の最新の音を取り入れるのは理解出来ますが、70年代は見事な化学反応を示して、時代を超越した音を発していたのに対して、80年代以降は化学変化することなく、その時代の音でしかないものになっております。しかし、年老いたマイルスにそこまで期待するべきではないのかもしれません。

一番の元凶はマーカスミラーにあります。才能ある彼を悪者にするのは可哀想かもしれませんが、化学反応を引き出すような采配が出来ていなかった事が原因です。彼はリトルマイルスと呼ばれるほどマイルスのように演奏する事が出来たのですが、それを全体に行き渡らせるような才能はなかったようです。結果は音になって残っております。決して内容が悪い訳ではありませんが、その時代でしか通用しない音が溢れております。音色にこだわっていれば現在でも通用する作品になっていたと思います。

[20060828]

We Want Miles We Want Miles
Miles Davis (1992/01/09)
Sony Jazz
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復活を果たしたマイルスのライブ盤です。タイトルからしていかにファンが待ち望んでいたかを象徴するようなものです。しかし、以前の邪悪で凶暴なマイルスはもういません。ビバップの時代以上にテーマを吹き続けるマイルス、ミュートトランペットはにはまだ完全復調ではない弱々しさがあります。ブローも決めてくれますが、以前の狂気はありません。しかたありません。もう隠居しても良い年齢なのです。それでもステージに立つマイルスには感服いたします。

1. Jean-Pierre
2. Back Seat Betty
3. Fast Track
4. Jean-Pierre
5. My Man's Gone Now
6. Kix

マイクスターンがジェフベックのようなフレーズを弾くところがカッコイイです。リズムもしっかりしているし、マーカスミラーのチョッパーベースもカッコいいのですが、こんなオーソドックスなマイルスを今更聴いてもなーと思います。

1981年7月5日のニューヨーク、アベリー・フィッシャー・ホールと1981年10月4日東京でのライヴ録音が収められています。全体的にリラックスした雰囲気があり、Kixなどはレゲエのリズムが使われています。時には肩の力を抜いたマイルスを聴きたい時にはお勧めです。

[20060827]

The Man with the Horn The Man with the Horn
Miles Davis (1990/10/25)
Sony Japan
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6年間というマイルス不在の時を経て発表されたマイルスカムバック第一弾アルバムです。何度か復活出来る予兆はあったものの、マイルス自身がなかなか動こうとはしなかった。アガルタ、パンゲアでやるべき事をやり尽くした男は、そこで消えても伝説となったであろう。しかし生涯現役を貫き通す為に男は帰ってきた。

時は1981年、巷ではフュージュンサウンドという洗練された音楽がマイルスの手元を離れて一人歩きをしていた。マイルスには新しいメンバーが必要だった。この時代に通用する才能、その男の力が必要だった。それがベーシストのマーカスミラーであります。彼は音楽的なプロデューサー的立場にまでなります。しかし残念ながらこの選択が復帰後のマイルスの音をつまらなくしてしまいます。才能がある素晴らしいミュージシャンであるマーカスミラーではありますが、あまりにも今という時代の音に固執したため、これまでのマイルスにあった時代を超越した響きが無くなってしまったのです。そうです。ここに収められている音はまぎれもなく80年代の音であり。当時は最先端の音ではありましたが、普遍性はありません。今聴くと時代遅れな音なのです。

80年代はMTVの影響もあって、ヒット曲は多いですが音が悪いアルバムだらけなのです。原因はシンセサイザーの進化です。性能が良くなり、デジタル化して価格も安くなり一般にも広がります。音も良くなりますが、良過ぎてプロでもプリセット音をそのまま使うような愚行が目立ちます。つまり便利になり過ぎて個性が失われたのです。アナログシンセは不安定でしたが、個性的な立った音が創れました。デジタルは音が綺麗になり、周りの音とも馴染み易くなりましたが、その分個性が無くなり音が立たなくなりました。ミュージシャンの力量よりも機械の方が先を行ってしまったのです。機械に扱われるような立場で、人が機械を扱えるようになるには時間がかかったのです。ですので、この時代にも良いアルバムはありますが、数えるほどしかありません。ほとんどの作品が音が薄っぺらく貧相な内容になっているのです。さすがのマイルスもこの時代の罠に落ち入ってしまいました。

1. Fat time
2. Backseat Betty
3. Shout Aida
4. Man with the horn
5. Ursula

復活後もエレクトリック楽器によるバンドになりますが、エレクトリックマイルス時代とは区別したいのです。音楽的特徴としてもメロディーをはっきり演奏するようになり、リズムもシンプルになり、ポップな感じになります。それでも音が良ければ問題は無かったのですが、もうマイルスも時代の先を行けるほどのバイタリティーはありません。マーカスミラーに一任していたのが最悪な結果を招いてしまいました。

新しいメンバーはベースのマーカスミラー、サックスのビルエヴァンス、ギターのマイクスターン、ランディーホール、バリーフィナティー、ドラムはアルフォスター、キーボードのロバートアーヴィング、パーカッションのサミーフィゲロア、他にベースのフェルトンクルーズ、ドラムにヴィンセントウィルバーンという面子が集められました。

しかし音楽的に駄目かと言うとそうではありません。さすがに強者揃いですので素晴らしい演奏を披露しています。でもエレクトリックマイルスの音を期待するとがっかりします。あまりにも洗練されてしまっているからです。時代の先を走っていたマイルスはもはやここには存在しません。時代にあった音楽を演奏しているのです。おまけにタイトル曲はボーカル入りのブラコンでしかありません。マイルスのアルバムじゃないと思って聴けば充分なレベルのある作品です。質の高いフュージュン作品として聴けば満足出来る作品になっています。しかし今聴くと色褪せている感は否めません。

[20060827]

1969マイルス 1969マイルス
マイルス・デイヴィス (1993/10/09)
ソニーミュージックエンタテインメント
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1969年フランスでのライブ音源によるアルバムです。Shorter、Corea、Holland、DeJohnetteというメンバーで、BitchesBrewとして確立される以前のエレクトリックマイルスの音があります。まだモードジャズ的な構成が残っている時期なので、非常にミクスチャーな混沌としていますが、聴き易さもあります。

1. Directions
2. Miles Runs the Voodoo Down
3. Milestones
4. footprints
5. 'Round Midnight
6. It's About That Time
7. Sanctuary~The Theme

まだ試行錯誤している時代ですが、ライブでは堂々たる演奏を繰り広げております。チックコリアのエレピもまだジャズ的で、デイブホランドもウッドベースを弾いているので、黄金のクィンテッドの進化形として捉える事も出来ます。この時代の音源というのは大変貴重で、マイルスの変遷を知る手がかりにもなります。非常に番外編的なアルバムですが、ジャズよりな人もロックよりな人にも楽しめる作品ではないでしょうか。

これにてエレクトリックマイルス時代の作品紹介は終了いたします。次回からは1981年にカムバックしてからの作品を紹介していきます。マイルスにとっての人生のラストスパートとなっていく時代のものです。

[20060827]

In Concert: Live at Philharmonic Hall In Concert: Live at Philharmonic Hall
Miles Davis (1997/07/29)
Tristar
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1972年、名作オンザコーナーが発表された後のステージ音源です。その為かファンク色が強い作品になっています。メンバーもラストスパートに入っているメンバーで、しかもマイルスは手術開けでした。そのせいかどうかは分かりませんが、これまでの毒素は感じられません。ノリは良いのですが、それはあくまでファンクのノリなのです。エレクトリックマイルスにはファンクでは片付けられないノリが存在しておりました。その為好き嫌いに分かれていましたが、この作品はその分聴き易いのではないでしょうか。物足りないと感じる面もありますが。

ディスク1
1. Rated X
2. Honky Tonk
3. Theme from Jack Johnson
4. Black Satin/The Theme
ディスク2
1. Ife
2. Right Off/The Theme

ジャケットはオンザコーナーと共通するものになっています。同じBlack Satinでもここではファンク面が強調されているので、ファンクグルーブとしてはとてもクールで素晴らしいものになっています。テクノ系の人には参考になるリズム構成かと思われます。

邪悪で凶暴なサウンドは期待出来ませんが、黒人としてのノリはしっかり表現出来ています。そもそもジャズはダンスホール等でお客さんを踊らせる為の音楽として親しまれてきました。しかしビバップにより演奏技術を競う方向へと向かっていったのです。それを又踊れる方向としてファンクを取り入れたのだとしたら、マイルスはもっと広く受け入れられていたでしょう。しかしマイルスのファンクでは踊れないのです。踊るというよりオルガズムスへと導かれるような高揚が存在するのです。そう言う意味ではトランスやアシッドの先駆けでしょう。

又、この時期のマイルは基本的に4/4拍子で変拍子は好みませんでした。これはアドリブし易いという事と、テオマセオによって編集し易いという考慮から来るものです。前もって編集ありきの前提で演奏していたのです。だから演奏者はひたすらアドリブに神経を集中出来たのです。しかし、この作品では特に編集はされていないようで、自然なライブ演奏が楽しめます。踊りたい人向けの作品かも知れません。

[20060827]

Black Beauty: Miles Davis at Fillmore West Black Beauty: Miles Davis at Fillmore West
Miles Davis (1997/07/29)
Tristar
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1970年フィルモアウェストにおけるライブ盤です。キースジャレットが参加する直前のメンバーでエレピはチックコリアが一人で担当しています。その為か、とても聴き易いです。キースのプレイの方が狂気じみている事が確認出来ます。チックも攻撃的な演奏をしていますが、キースのように逝っちゃている訳ではありません。どこか正気を感じられます。

ディスク1
1. Directions
2. Miles Runs the Voodoo Down
3. Willie Nelson
4. I Fall in Love Too Easily
5. Sanctuary
6. It's About That Time
ディスク2
1. Bitches Brew
2. Masqualero
3. Spanish Key/The Theme

アトフィルモアというアルバムではテオマセオのカット&ペーストの手法が使われていましたが、この作品はメスを入れる事無く、そのままの演奏が収録されている事が特徴です。編集された作品と聴き比べるとテオの編集技術に感心させられますが、これはこれで面白いです。

出だしとかは他の作品のように勢いがあり、攻撃的ですが、邪悪な感じがしておりません。キースジャレットがいないだけでこうも違うのかと思ってしまいます。その代わり、マイルスのトランペットが非常に攻撃的で強烈です。人数が6人しかいないという点でもすっきりとした聴き心地があります。

しかしスペックが衰えている訳ではなく、実に鋭利なプレイの連続です。アナザーサイドオブエレクトリックマイルスとして聴くと興味深い内容です。ギターもキースのエレピも無い状態なのでマイルスのソロパートが多いようにも感じられます。ですので、マイルスのプレイを堪能したい場合には有用な作品です。他の作品も聴き込んで、まだ聴きたいという願望がある人には打ってつけの隠れた名盤です。

[20060826]

ディレクションズ ディレクションズ
マイルス・デイヴィス (2001/07/18)
ソニーミュージックエンタテインメント
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このアルバムは1960年から1970年にかけてのテイクが収められたアルバムになります。オリジナルアルバムには収められなかった曲ばかりですが、内容的には興味深い曲ばかりで、マイルスファンには涎ものの作品です。

ディスク 1
1 Song of Our Country
2 'Round Midnight
3 So Near, So Far
4 Limbo
5 Water on the Pond
6 Fun
7 Directions, No. 1
8 Directions, No. 2
ディスク 2
1 Ascent
2 Duran
3 Konda
4 Willie Nelson

Song of Our Country はスケッチオブスペインのアウトテイクで、ギルエヴァンスオーケストラとの共演曲です。イントロからカッコイイ素晴らしい曲ですが、アルバムイメージには合わなかったようです。So Near, So Far、Limbo、Water on the Pond 、Funは黄金のクィンテッドによるエレクトリックへと移行している時の演奏で、斬新なアレンジが素晴らしいものばかりです。

タイトルのDirectionsはジョーザヴィヌルの作曲で、これ以降もライブやウェザーレポートでも再演されていきます。ハービー、チックコリアとのトリプルキーボードになっています。ジャックディジョネットのドラムがカッコいいです。DuranはP-FUNKのようなノリの曲です。ジョンマクラフリンがギターカッティングばかりしているところが末恐ろしいです。Kondaはおおらかなテーマがラテン系です。Willie Nelsonはカントリーシンガーに捧げられた曲です。曲はエレクトリックファンクなのでどういう意味があるかは分かりません。マクラフリンのギターリフがインド的なのも面白いです。

アウトテイクから見えてくるものもありますので、オリジナルアルバムでは理解出来ない部分を補う為には必要な作品です。しかし、この頃のマイルスがやりたかった事を理解するには他のファンクやロック、ジャズ、サイケ、民族音楽、現代音楽と多岐にわたって聴き込む必要があります。その上で、それらの音楽とは違う次元で創造されている事に気づけば、此の時代のエレクトリックマイルスサウンドは今だに誰からも超えられていない最新の音楽であり続けている事が理解出来るでしょう。それほど深い衝動が潜んでいるのです。

Directions (Joe Zawinul)

[20060826]

サークル・イン・ザ・ラウンド サークル・イン・ザ・ラウンド
マイルス・デイヴィス (2001/07/18)
ソニーミュージックエンタテインメント
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このアルバムは1955年から1970年代までの未発表音源で構成されています。モダンジャズの旗手としてのマイルスから徐々にエレクトリックを導入していく過程が描かれています。

ディスク1
1. Two Bass Hit
2. Love for Sale
3. Blues No. 2
4. Circle in the Round
ディスク2
1. Teo's Bag
2. Side Car I
3. Side Car II
4. Splash
5. Sanctuary
6. Guinnevere

何と言っても圧巻は初めてエレキギター導入という事でジョーベックが参加している幻のテイクが陽の目を見たという事です。Circle in the Roundがそれで、幻想的な曲にナチュラルなセミアコと思われるギターが聴き取れます。ジョージベンソンのプレイよりこちらの方が面白いですが、どちらにしろマイルスには気に入ってもらえなかったようです。

Teo's Bag,Side Car,Splashは黄金のクィンテッド時代の音源ですが、リズム感は既にエレクトリック感覚になっているところが面白い時期の作品になっています。この頃のマイルスが好きな人ならエレクトリックの時代も理解出来たはずです。Sanctuaryではジョージベンソンがギターを弾いていますが、ジャズよりな演奏です。

Guinnevereでは呪術的なエレクトリックマイルスの儀式が執り行われております。新作が出ない時期に出た貴重な音源集です。モダンジャズしか認めない人もこのアルバムを聴いて、マイルスの音楽性は常に一貫している事を感じてくれたらと思います。

[20060826]

Big Fun Big Fun
Miles Davis (2000/08/01)
Sony International
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1975年から1981年までの6年間、マイルスは病気療養のため不在となる。新譜を出せないレコード会社からの命によりテオマセオが未発表音源を編集して、新作のようにいくつかのアルバムを出していきます。これまでもいくつかのアルバムは紹介しましたが、残りのアルバムも紹介いたします。

このアルバムはビッチェズブリューの時代からオンザコーナーの時代にかけて録音されていた曲が並べられております。特にGreat Expectationsのサンプリングされたようなドラムフレーズとタブラの絡むミニマル的なアレンジにまとわりつくフレーズの嵐は、ウェザーリポートにより受け継がれていき、テクノやトランス、ドラムンベースにジャングルなどに通じる作風になっております。

ディスク1
1. Great Expectations
2. Ife
3. Recollections
4. Trevere
ディスク2
1. Go Ahead John
2. Lonely Fire
3. Little Blue Frog
4. Yaphet

リズムのコンセプトは今風ではありませんが、ジェームスブラウンの実験的なリズムパターンと聴き比べると面白いです。ファンクが一番面白かった時期の作風なのです。Go Ahead Johnではジャックディジョネットとビリーコブハムのドラムがそれぞれテープカットされ、フレーズサンプリングのように貼付けられるというコラージュ的なドラムパターンがブレイクビーツ的であります。70年代前半でこれだけの事をやっていたのですから驚異であります。

現在のDTM環境なら簡単に創り出せるものですが、当時はかなりの作業が必要だったはずです。ファズで歪ませたジョンマクラフリンのギターもミックスダウンの時に施しているようです。エレクトリックマイルスのアルバムの中では一番実験的なアルバムで、テクノ系のミュージシャンには大いに参考になるアルバムでしょう。私としても一番参考にさせて頂いている作品です。ある意味かくれた名盤となっております。

[20060826]

パンゲア パンゲア
マイルス・デイヴィス (2001/05/23)
ソニーミュージックエンタテインメント
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奇跡のライブ音源、アガルタは大阪公演の昼の部でしたが、このパンゲアは同じ日の夜の部になります。演奏している曲は同じようなものですが、アドリブが主体なので、昼と夜の部では全く違う曲になっています。ですからタイトルも違っております。

ディスク1
1. Zimbabwe
ディスク2
1. Gondwana

このパンゲアではより完成された演奏が聴けます。ここまで完成されると、もはやサイケではなくプログレと表現してしまいたくなりますが、プログレのような予定調和ではなく、あくまでもアドリブによる偶発的な奇跡として存在している事に意味があります。楽譜通りに演奏するという事も簡単なものではありませんが、それは演奏家の仕事であって、楽譜も無いのに自らの感性でその場で音を創造していくという事はクリエイターとしての仕事だと思います。しかし、このバンドでのクリエイターはマイルス一人です。他のメンバーは演奏家です。ですが,バンドとして熟れていくうちにマイルスはメンバー全員をクリエイターとして育て上げたのです。

しかし彼等がこのバンドを去ってから、これほどのクリエイトが出来たかと言うと出来ておりません。このアルバムに収められている奇跡はマイルスという重力によって創り出されているのです。マイルスは細かい指示は出しません。凡人なら細かい指示が無ければ何も出来ませんが、マイルスから与えられた自由というのは、かなりのレベルを要求される自由であり、非凡な人間でも否応無しにかなりのレベルを出さざるおえない状況になっております。このメンバーはそれに応える事が出来たのです。

しかし、このアルバムを頂点としてエレクトリックマイルスは終焉を迎えます。これまでの無理がたたって長期病気療養を強いられるのです。マイルス不在の6年間に、時代はより急速的に進化していきます。

[20060825]

アガルタ アガルタ
マイルス・デイヴィス (2000/06/21)
ソニーミュージックエンタテインメント
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エレクトリックマイルスが到達した頂点。それがこのアガルタとパンゲアという2枚組の2つのライブアルバムです。どんなに素晴らしい曲でも演奏する人によって違ってくる。同じ人でもその日のコンディションによって違ってくる。又、バンド全体が絶好調というステージはめったにない。全てのプレイヤーが最高の演奏をして、マイルスが思い描くように演奏するという完成された演奏がこの2つのアルバムには奇跡的に収められている。しかもそれは日本での公演によるものなのである。

本来、ライブでもスタジオでもテオマセオがカット&ペーストによる編集を施す事が前提となって演奏が進んでいく。しかしこのステージではほとんど編集の必要がないくらい完璧な演奏が成されている。自分のバンドが思い通りに演奏をこなしていくというのはリーダーにとっては理想的な事だが、なかなかそうはうまくいかない。フランクザッパも素晴らしいミュージシャンを集めても旨くいかないジレンマに悩んでいた。それを解消する為にシンクラビアというモンスターマシンで憂さを晴らしていく事になる。マイルスもこれまで一流のミュージシャンを集めてきました。時には強引に引き抜いたりしておりましたが、なかなか全員が最高の演奏をする瞬間には立ち会っていなかった事でしょう。しかしその奇跡がこうしてアルバムとして残された事を我々は幸せにも聴く事が出来るのです。しかも、アナログ盤ではフェイドアウトしていた部分がCDでは完全収録されました。

ディスク1
1. Prelude, Pt. 1
2. Prelude, Pt. 2
3. Maiysha
ディスク2
1. Interlude
2. Theme From Jack Johnson

この奇跡の演奏をしたメンバーはドラムのアルフォスター、パーカッションのムトゥーメ、ベースのマイケルヘンダーソン、ピートコージーとレジールーカスの二人のギタリスト。サックスのソニーフォーチュン、そして帝王マイルスデイヴィスです。この完璧な演奏にはもはや邪悪で凶暴な怪物は存在しておりません。見事に調和が取れたポリリズムとマイルスの呼吸と全員が一つになったグルーヴが存在しているのです。私個人としてはアトフィルモアやライブイーブルのような凶悪なサウンドが好きですが、このアルバムは誰にでも分かるくらい鮮明な調和があり、エレクトリックマイルスを理解出来ない人でも気に入ってくれると思います。

アルバムジャケットは日本人の横尾忠則が担当しており、スリランカの伝説の地底都市アガルタを描いているのだそうです。ニューヨークの摩天楼のようではありますが。唯残念なのが動画としては残っていない事です。この日の演奏の動画を持っている人はYOU TUBEに投稿して下さい。しかし、エレクトリックマイルスの最後を飾るに相応しい名盤であります。

[20060824]

Dark Magus: Live At Carnegie Hall [2-CD SET] Dark Magus: Live At Carnegie Hall [2-CD SET]
Miles Davis (1997/07/29)
Tristar
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アトフィルモアやライブイーブルも邪悪で凶暴な作品でしたが、このアルバムはその凶暴さがより進化したとてつもないアルバムです。エレクトリックマイルスを支えてきたメンバー達も自分のバンドを持つようになりました。ジョーザビヌルはウェインショーターと組んでウェザーリポートを。ジョンマクラフリンはビリーコブハムと組んでマハビシュヌオーケストラを。チックコリアはフリージャズ系のサークルを経てリターントゥフォーエバーを、ハービーハンコックはセクスタントのバンドを経てヘッドハンターを結成。一大フュージュンブームを築き上げていきます。

マイルスはそれに負けじと新しいメンバーを集めていきます。ドラムのアルフォスター、ベースのマイケルヘンダーソンのファンクビート。レジールーカス、ピートコージの新鋭ギタリスト。デイブリーブマンのサックス。ムトゥーメのパーカッション。そしてこのライブがぶっつけ本場でオーディションもかねていたテナーサックスのエイゾーローレンス。ギターのドミニックガーモントという新しい若さを手に入れました。

ディスク1
1. Moja, Pt. 1
2. Moja, Pt. 2
3. Wili, Pt. 1
4. Wili, Pt. 2
ディスク2
1. Tatu, Pt. 1
2. Tatu ("Calypso Frelimo"), Pt. 2
3. Nne ("Lfe"), Pt. 1
4. Nne, Pt. 2

オープニングはまるでツェッペリンのロックンロールのようなシンバルの連打から始まります。そしてこれまでとは異質な凶悪で邪悪な音絵巻が炸裂していきます。初期のメンバーは初めてのエレクトリック体験のためぎこちなさがあり、それも魅力だったのですが。ここではすでに先輩方が築いてきた前例もあり、又、マイルスに気に入られようと必死になって演奏しておりますので、違った緊張感があります。そしてこなれてもおります。そしてオーディションもかねた新メンバーの存在もあり、いつも以上にテンションが高い異常な熱が発散されております。

Dark Magusとは黒魔術師という意味があるそうな、ヴードゥー、ヒンズーそしてブラックマジックの呪さえも取り込もうとしていたのでしょうか。マイルスのステージはまるで儀式のような内容でもあります。残念ながらローレンスはオーディションは通らず採用されませんでしたが、この勢いがエレクトリックマイルスをクライマックスまで昇華させていく事になります。

弾かないという演奏もマイルスは重要視しています。つまりいかに休符を設けるかも作曲の一部なのです。マイルスも必要な時に現れては消えていくという演奏をしています。全ての音楽理論を知った上での破壊行為。それはとてつもないくらいに強烈な愛情を含んでもいます。

Electric Miles

[20060823]

Get Up with It Get Up with It
Miles Davis (2000/08/01)
Tristar
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エレクトリックマイルス時代のオリジナルスタジオ盤としては最後の作品です。その為か必要最小限の音数で構成されており、此の時代の中では一番聴き易いものになっております。しかしかなりダーク部分とソウルファンク的な部分の対比が強烈です。70~74年にかけて録音されたテイクから編集されていますが、一体感はあります。

ディスク1
1. He Loved Him Madly
2. Maiysha
3. Honky Tonk
4. Rated X
ディスク2
1. Calypso Frelimo
2. Red China Blues
3. Mtume
4. Billy Preston

He Loved Him Madlyはデュークエリントンへの鎮魂歌と言われております。その為かかなりダークで、ジミヘンのエレクトリックレディーランドの後半のような環境音楽的な静寂に曲開始後、16分くらいでやっとマイルスのトランペットが登場します。全体的にはデイヴリーブマンのフルートの物悲しい響きがレクイエムのように聴こえます。Maiyshaではまるでマーヴィンゲイのようなギターカッティングがソウルフルです。レジールーカスとピートコージーによるギターがこの頃には確立されております。後半官能的なくらいに狂おしいギターが聴けます。Honky Tonkはジャックジョンソンのセッションにキースジャレットが加わった。ファンキーな作品です。Rated Xではアルフォスターのドラムにまとわりつくタブラのビートが前作オンザコーナーのように強烈に恥骨に響きます。カッチョイイー。

Calypso Frelimoでは邪悪な演奏にカリプソ風のポップなメロディーが乗った変わった曲です。Red China Bluesではコーネルデュプリが参加したソウルフルなブルースナンバーになっております。ここまでロック的なブルースをやるマイルスは珍しいです。一番ポップな曲ではないでしょうか。Mtumeはパーカッションのムトゥーメの名を冠した曲で、ムトゥーメのパーカッションが大フューチャーされています。マイルスがメンバーの名前をタイトルにしたのはジョンマクラフリンとこの曲くらいです。後はテオマセオやビルエヴァンスくらいです。Billy Prestonは参加していないのにBilly Prestonの名が冠されています。かなりファンキーな曲です。このアルバムが一番ファンク色が強いです。全曲マイルスが作曲しています。

2枚組で長編ですが、一番解り易く、初心者向けかもしれませんが、しっかりと毒が隠されていますので、用心しないと犯されてしまいます。このアルバム発表後から新メンバーによりエレクトリッックマイルス最終章へと突入していきます。実に黒っぽいマイルスによる宣戦布告となる名盤であります。

Honky Tonk

Rated X

Red China Blues

[20060822]

On the Corner On the Corner
Miles Davis (2000/08/01)
Sony
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エレクトリックマイルスの作品の中での最高傑作アルバムです。私的にはマイルスの発表したアルバムの中でも最高傑作の一枚です。しかしモダンジャズ時代のマイルスしか認めていない人にはそうはならないでしょうが。これまでマイルスが試作を繰り返してきた全ての集大成となっております。

アルバムジャケットのイメージは黒人のポップ感覚に溢れたアニメが使われており、ファンキーなイメージで語られるアルバムですが、それだけではありません。これまで何度も言ってきましたが、マイルスの音楽には民族音楽的な思想も入っており、このアルバムは間違いなくサイケデリックミュージック作品なのです。それも最高に質の高いサイケアルバムです。この捉え方が出来ない人には意味不明なくらいにイカレタ音楽に聴こえるでしょう。しかしこの音楽は理解しなくても良いのです。自身に脈打つ細胞で感じて下さい。これは覚醒の音楽なのです。全神経から溢れる目覚めの音楽なのです。それを体感出来たとき、マイルスの言う精神的オルガズムスへと到達出来るのです。

1. On the Corner/New York Girl/Thinking of One Thing and Doing Another/Vote for Miles
2. Black Satin
3. One and One
4. Helen Butte/Mr. Freedom X

ジャックディジョネットとマイケルヘンダーソンが打ち出すリズムは明らかにファンクです。アフロアフリカンと言ってもいい。ドンアイラス、ムトゥーメ、ビリーハートが創り出すグルーブはラテンアメリカのデフォルメです。そしてこのアルバムの特徴のシタールとタブラが創り出すグルーブはインド音楽であり、サイケデリックであり、フレーズサンプリングされたような音の断片はミニマルのようであり、トランスであり、テクノであり,ヒップホップ、ドラムンベース、ジャングルであります。そしてクラプトンやジミヘンを思わせるジョンマクラフリンのギターもかなり逝っています。フィードバックまでやってのけております。ジェフベックがブローバイブローで使ったフレーズが聴き取れますので、このアルバムからパクったものと推測出来ます。ハービーがゲストで洪水のようなエレピを弾きます。デイブリーブマン、カルロスガーネットのサックスにワウなどえエフェクティヴなトランペットをマイルスが吹く時にはもう昇天は近いです。

ローファイでイコライジングされた音の洪水は最初から最後まで延々と続いていきます。其れをカット&ペスト繋ぎ合わせたテオマセオの手腕も光ります。しかし、このアルバムでもマイルスはただ問いかけるのみで、答えは用意しておりません。ただ提示するのみです。全曲マイルスの作曲になります、それだけマイルスの思いが伝わってきます。テクノなどでは表現出来ない原子衝動のような生きたリズムパターンは狂おしいほど神経経路を刺激し続けます。ロックもヒップホップもつまらなく感じている私のような人間にはもってこいのカンフル剤です。

ジャンルを超越した名盤中の名盤です。しかしあくまでも黒人である事を主張したジャケット。マイルスの集大成と言っていいでしょう。ピンクフロイドのファーストは信号音のようなサイケ作品でしたが、それに近くも超えているサイケデリックファンクジャズロックアルバムです。体全身で逝く事の悦びを男も知るべきである。

On the Corner
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[20060821]

マイルス・エレクトリック マイルス・エレクトリック
マイルス・デイヴィス (2004/11/25)
ビデオアーツ・ミュージック
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1970年、ワイト島ミュージック・フェスティヴァルに出演した時の映像です。ウッドストックに続き、ロックの一大イヴェントとして有名なフェスティバルですが、ジャズ界から唯一エレクトリックマイルスバンドが殴り込みをかけました。

マイルス・デイヴィス(tp)、キース・ジャレット(el org)、チック・コリア(ep)、ジャック・ディジョネット(ds)、ゲイリー・バーツ(ss)、デイヴ・ホランド(eb)、アイアート・モレイラ(perc)というメンバーで収録曲は38分ほどの1曲ですが,実際にはこれまでに発表していた曲をメドレーで演奏しています。アドリブがほとんどなので、曲名はあってないようなものです。スタッフから曲目はと聴かれ、CALL IT ANYTHING。好きなようにつけてくれと言われ、CALL IT ANYTHINGという1曲としてクレジットされております。

此の時代の映像は貴重で興味深い内容です。ロックファンはラリっている人もいたでしょうが、大いに受けています。特にキースジャレットのファンキーな動きによるプレイは、このマイルスとのジャムからしか見れません。この頃から下を向きながらトランペットを吹くマイルスが印象的です。向き加減で音が変わるのですが、本来のトランペットの奏法としては邪道です。しかしもうマイルスは古きしきたりなど関係ないのです。自在な音使いこそが本意なのです。

この演奏の他に、マイルスに関わった人達のインタビューが盛り込まれております。この内容が又貴重な証言で、もう一つの楽しみなっております。そして誰もがマイルスの独特の口調を真似して喋るのが愛情を感じます。このステージにはザフーやジミヘンも参加しております。マイルスにはいつかジミヘンとのセッションをと夢見ていましたが、ジミの死によって叶わぬ夢となってしまいました。

当時このエレクトリックのセッションに参加した人達の生の声を聞けば、マイルスの音楽がどれほど愛情に溢れていたのかが伺えてきます。エレクトリックマイルス。取っ付きにくい人は、この映像から入ってもいいのではないでしょうか。

CALL IT ANYTHING

[20060820]

Live-Evil Live-Evil
Miles Davis (2001/02/06)
Columbia/Legacy
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エレクトリックマイルス時代において重要な位置を占める名盤です。アトフィルモア以上に凶暴なライブ演奏とスタジオ録音による幻想的な曲に分けられている。このアルバムのテーマは生と死、破壊と創造であります。タイトルもLIVEを反対にしたEVILになっており。一曲目のSIVADも反対にするとDAVISになります。シヴァとはヒンズー教での破壊と再生の神様となっております。これは正にマイルスがやっている音楽にそのまま当てはまります。このアルバムではライブで破壊を尽くし、スタジオで再生を構築しているようなニュアンスがあります。

ライブではキースジャレット、ジョンマクラフリン、ゲイリーバーツ、ジャックディジョネット、マイケルヘンダーソン、アイアートモレイラにマイルスという布陣である。マイケルとジャックによる骨太なファンクビートに凶暴なキースのエレピとジョンのギター、そしてマイルスはトランペットにペダルワウを通してジミヘンになりきったかのようなプレイで吼えまくる。

ディスク1
1. Sivad
2. Little Church
3. Medley: Gemini/Double Image
4. What I Say
ディスク2
1. Nem Um Talvez
2. Selim
3. Funky Tonk
4. Inamorata and Narration

このアルバムの作成にはジョンマクラフリンが不可欠だったとマイルスが供述している通り、当時ジョンマクラフリンはヒンズー教に帰依しております。イギリスには多くのインド人が済んでおり、ジョージハリソンもヒンズー教に帰依していて有名です。特にサイケデリックムーブメントにおいては内面的な東洋哲学がもてはやされており、イギリスではヒンズー教への感心が高まっておりました。サンタナもヒンズー教徒として有名でしたが、現在はAMERICA SOKA GAKKAI INTERNATIONALに入信しております。このSGIには有名なジャズメンが多く、ハービーハンコック、ウェインショーター、バスターウィリアムス、ラリーコリエルなどがいます。これだけのメンバーだけでスーパーバンドが結成出来るほどです。

マイルスの目論見はサイケデリックとしての自身の音楽の完成にあったと思われます。ジャズ、ファンク、ロック、ラテン、アフロアフリカン、現代音楽、そしてインド音楽までも取り入れてよりサイケな感覚の新しい音楽を視野に入れていたと思われます。一般的にはジャズ、ファンク、ロックばかりが取り上げられており、民族音楽的な部分が無視されておりました。その為難解だと評論する人が多いですが、しっかりと内容を聴き取ればマイルスの視点が見えてくるはずです。

Selimという曲がありますが、これも逆さまにするとmilesになります。破壊と再生を自身の手によって構築する。そんな意思を感じるアルバムです。ジョンマクラフリンはマイルス時代にはそれほど弾きまくりませんが、ここでは遠慮しながらもかなり弾きまくっています。この人が本気で弾きまくったらこんなものではありません。マハヴィシュヌオーケストラを聴けば分かります。

Little Church,Nem Um Talvez,Selim,はスタジオ録音で、生命讃歌のような気高い環境音楽のような美しい音楽ばかりです。このバランスがマイルスが意図していたものだと思われます。しかしライブでのマイルスは邪悪なほどに凶暴です。このアルバムはマイルスが描いた一大曼荼羅なのではないでしょうか。

Miles Davis & Keith Jarrett

Sivad

[20060820]

At Fillmore: Live at the Fillmore East At Fillmore: Live at the Fillmore East
Miles Davis (1997/07/29)
Tristar
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ジャズの醍醐味はライヴである。エレクトリックマイルスにしてもライブが圧巻なのであります。
当時アメリカにはフィルモアイーストとウェストというロックの聖地的なライブハウスがありました。ここからはサンタナやブルースをやっていた頃のボズスキャッグスなどが出てきました。そのロックファンが集まるライブハウスにジャズ畑のマイルスが殴り込みをかけました。ロックバンドの前座という屈辱にも耐えながら、ロックファンの度肝を抜く演奏を繰り広げていった訳であります。

既にロック界では、モードジャズに影響を受けたジャックブルースがクリームを結成してインプロヴィゼーションソロが流行っておりましたので、ロックファンにはジャズを聴く素養が出来上がっておりました。しかしエレクトリックマイルスの音楽はそれだけではありません。圧倒的な音の固まりをカメハメ波のように連続速射していく訳です。さすがに面食らった事でしょう。

ディスク1
1. Directions [Wednesday Miles]
2. Bitches Brew [Wednesday Miles]
3. Mask [Wednesday Miles]
4. It's About That Time [Wednesday Miles]
5. Bitches Brew/The Theme [Wednesday Miles]
6. Directions [Thursday Miles]
7. Mask [Thursday Miles]
8. It's About That Time [Thursday Miles]
ディスク2
1. It's About That Time [Friday Miles]
2. I Fall in Love Too Easily [Friday Miles]
3. Sanctuary [Saturday Miles]
4. Bitches Brew [Saturday Miles]
5. It's About That Time [Saturday Miles]
6. I Fall in Love Too Easily [Saturday Miles]
7. Sanctuary [Saturday Miles]
8. Bitches Brew [Saturday Miles]
9. Willie Nelson/The Theme [Saturday Miles]

以前はWednesday Miles、Thursday Miles、Friday Miles、Saturday Milesの4曲しかクレジットされておりませんでした。レコードの曲を演奏しておりますが、その日によって全然別の曲のような演奏になっており、テオマセオによってカット&ペーストで編集されていたため、別の曲目でも通用したのです。しかし、実際に演奏されている曲目が付け加えられております。でもこの作品は全く新しい作品として聴いても十分聴応えのある内容です。

まずメンバーですがギターレスです。チックコリアとキースジャレットのダブルキーボード、ベースのデイヴホランド、ドラムのジャックディジョネット、ソプラノサックスのスティーヴグロスマン、パーカッションのアイアートモレイラ。アイアートは南米からの移民ですが、マイルスに認められラテンのリズムを加えたエレクトリックマイルスはより民族音楽的要素を加えていきます。ギター以上に攻撃的なキースジャレットのキーボードプレイもここでしか聴けません。

此の時代の要はドラムのジャックディジョネットです。チャールズ・ロイドのバンドにいた彼は強引にマイルスにより引き抜かれました。チャールズ・ロイドからクレームをつけましたが、『なんだ、お前の方が引き抜かれたかったのか』とマイルスに言われ呆れていたそうです。マイルス流のジョークでしょうが、マイルスらしいセリフです。

この時代、ツェッペリンやキングクリムゾンが世に出てきますが、それらのバンド以上のパワーを炸裂しているアルバムであります。Bitches Brewも大人しく聴こえてしまうぐらい凶暴な悪徳な音楽が支配しています。パンクやポップグループのようなアヴァンギャルドなロックさえも太刀打ち出来ないほどです。唯一対抗出来るとしたらフランクザッパ位なものでしょうか。しかしマイルスにはフランクザッパのようなユーモアは存在せず、恐ろしいほどシリアスな緊張感が漲っております。

[20060820]

A Tribute to Jack Johnson A Tribute to Jack Johnson
Miles Davis (2005/01/11)
Sony Jazz
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ボクシング黒人初のへヴィー級チャンピョン、ジャックジョンソンのドキュメンタリー映画のサントラとして発売されたアルバムです。ここで聴かれるサウンドは、これまでの混沌としたエレクトリックではなく、明快なぐらいのロックサウンドです。ですから此の時代の中では一番聴き易いし、カッコイイです。曲自体もあらかじめ用意されたものではなく、ジョンマクラフリン達がロック的なセッションをしているのを聴いたマイルスがいきなり加わりジャムった録音のようです。

黒人として初めてチャンピョンになり、初めてのアメリカンドリームを手に入れた黒人。スポーツカーに乗り、白人美女を引き連れて贅を尽くした晩餐を繰り返す。彼は正に黒人の憧れでもあったのです。マイルスも勿論彼のファンで、サントラの依頼は快く承諾したのですが、多忙な為収録されていたセッションからテオマセオが編集して作品化するといういつもの手法がとられています。

1. Right Off
2. Yesternow

この2曲が映画の中で効果的に使われております。私も映画は見ましたが、ボクサーの映画に此の音楽はかなりハマります。マイルスの音楽はどんなに変革を繰り返しても黒人的であるのです。それが彼のアイデンティティであるかのように黒いのです。一発で黒人の為の音楽である事が聴き取れます。又、当時のボクシングは決着がつくまで20ラウンドでも30ラウンドでも闘わせ続けます。こんな試合を続けていたら体はボロボロになる事でしょう。それでも勝ち続けるジャックジョンソンの試合は痛快です。そこへこの痛快な音楽が又良くハマるのです。カッチョイイー。

此のセッションで大活躍しているのがギターのジョンマクラフリンです。この一言につきます。そしてドラムのビリーコブハム、ジャックディジョネットのタイトなドラムワーク。マイルスも最高のプレイをしています。正に闘う男の為の音楽です。このセッションが後のマハヴィシュヌオーケストラ結成へと繋がります。

ジャックジョンソンの動画を用意しましたが、映画のものではなく単なるドキュメンタリーになっております。しかしジャックの凄さが伺える内容になっております。

Jack Johnson



[20060820]

Bitches Brew Bitches Brew
Miles Davis (1999/06/08)
Sony
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マイルスの、いやジャズ界、いやロック界、いや音楽界にとっての最大の問題作であります。前作インアサイレントウェイには癒しがあり、受け入れられる要素が残っていたが、此のアルバムでは癒しを音楽に求めている輩には拒絶反応を示してしまうような音楽が充満している。永らく音楽に癒しを求める聴衆が多く、作り手も其れに答えるような作品が現在まで続いていた。しかし、ロックが誕生した時に生まれたエネルギーには癒しではなく、覚醒を促進させるエナジーがあった事を忘れないでいてもらいたい。その、ある者には嫌悪感さえ与えかねないパワーがこの作品にはあるのだ。音楽的な事ではない、生理的な部分でこのアルバムは見事にロックの本質さえも取り入れている。

エレクトリックマイルスの特徴。ロック、ファンク、ジャズの融合の他にネイティブアフリカンな要素も加わり、民族音楽までもがマイルスによって料理されている。当時はジャズロックと呼ばれ、洗練されてフュージュン、クロスオーバーという名称がついてくるですが、この原始的な衝動性においては一つの形容しか出来ないでありましょう。それはサイケデリックという言葉です。誰も此の言葉でマイルスを表現しませんが、此の時代のマイルスは明らかにサイケデリックジャズと呼ばれるべき音楽を創り出していたのです。

ディスク1
1. Pharaoh's Dance
2. Bitches Brew
ディスク2
1. Spanish Key
2. John McLaughlin
3. Miles Runs The Voodoo Down
4. Sanctuary

黄金のクィンテッドのメンバーはそれぞれが自身のバンドに向けてスタートしており、此のアルバムにはウェインショーターしか参加しておりません。新しくマイルスによって集められた新鋭は、ドラムのジャックディジョネットを始め、レニーホワイト、ラリーヤング、チャールスアイラス、ジムライリー、ベニーモウピンハーベイブルックス、それにチックコリアとジョーザビヌル、デイブホランド、ジョンマクラフリンというラインアップです。この時期のマイルスの口癖、ジミヘンのように弾いてみろ、に触発されてマクラフリンのギターにディストーションがかかり、まだ遠慮がちですが、攻撃的なプレイが聴けるようになりました。

あらゆる音楽を飲み込んで増殖する音の固まりのモンスターが此のアルバムには潜んでいます。マイルスのプレイも旋律ではなく、音の固まりとしか表現出来ないスピリチュアルなものになっております。レコード会社側からはもっとジャズよりなものを創るように言われておりました、ジャズレコードよりロックレコードの売り上げが明らかに上の時代です。マイルスはロックファンを取り込めれば、ロックアルバム並みの売り上げが期待できるという目論みもありました。確かに賛否両論あるアルバムですが、以前より売り上げを上げております。しかし、ジャズファンにもロックファンにも理解できないような作品になっている事は事実です。ロックファンを増やすならもっと明快な音楽を創れば良かったのですが、マイルスはそれほどお人好しではありません。もっと先を目指していたのです。

事実このアルバムを理解出来るのは未来からの聴衆でしょう。エレクトリックテクノ、ジャングル、トランス、ドラムンベースなどの音楽を聞き慣れた耳ならこのマイルスがやらんとしている音楽に共感を持つ事が出来るはずです。共通項はリズムの変革、抽象的な旋律。現代音楽の方法論を理解していないポピュラーミュージックに慣れ親しんでいる人には異質に聴こえる音楽です。ロックが誕生した時に万人に受け入れられた訳ではありません。その後洗練されてファンが増えていったのです。このアルバムも万人に受け入れられる必要はありません。しかし未来に生きる私達は、このアルバムから発せられているエネルギーを完全には昇華していないまま、時代の迷宮に捕われております。現在の退屈でつまらない音楽事情を打破出来るヒントがこのアルバムには秘められているのです。人それぞれの解釈はあると思いますが、受け継がなければならない歴史的教訓は真摯に受け止め、良質な音楽の未来の糧にするべきでしょう。そんな啓示のような超名盤であります。

Bitches Brew


[20060819]

In a Silent Way (Dlx) In a Silent Way (Dlx)
Miles Davis (2002/08/20)
Sony
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エレクトリックマイルス時代の到来を告げた記念すべきアルバムです。ここに到達する為に実験的なセッションが繰り返されてきたアルバムを紹介しておりましたが、此のアルバムから正式にオリジナルアルバムとしてリリースされました。

当時マイルスが参考にしていた音楽は、シュトックハウゼンなどの現代音楽家やジェームスブラウン、スライ&ザファミリーストーンなどのファンクミュージック。そしてジミヘンドリックなどのロックミュージックでした。それら音楽の方法論をジャズに融合したのが此の頃のマイルスザウンドになります。ロックとジャズの融合はこれ以前にもありました。ゲイリーバートンがラリーコリエルと組んだダスターというアルバムは1967年の作品でした。しかしそこではジャズとビートルズ的なロックの融合でした。つまりジャズとポップスの融合だったのです。しかしこれが最初のジャズロックアルバムでした。そしてマイルスから離れてライフタイムというバンドを組んだトニーウィリアムスは、イギリスから連れてきたギタリスト、ジョンマクラフリンを従えてフリージャズとロックの融合に挑戦しておりました。此のバンドのライブを見たマイルスいは大きなヒントとなった事でしょう。

そのジョンマクラフリンをギタリストとして招集し、ジョーザビヌルにエレピとオルガンを弾かせ、ハービーハンコックとチックコリアによるダブルエレピを構成させ、イギリスから連れてきたデイヴホランドのベースとトニーウィリアムスのドラムによるリズムセクション。マイルスとショーターによる管の旋律というラインナップです。

1. Shhh/Peaceful
2. In A Silent Way

タイトルのIn A Silent Wayはジョーザビヌルによる作曲で、美しい名曲であります。ジョーはキャノンボールアダレイのバンドでマーシーマーシーという曲をヒットさせた経歴があります。マクラフリンののギターはナチュラルトーンでジャズ的なプレイをしておりますが、やっとマイルスが探し求めていたギタリストに合えたという事で、此の後も度々招集されていきます。

此のアルバムではロックとジャズ、ファンクの融合が成されておりますが、騒がしい音楽ではなく、カインドオブブルーのような美しさを持ったアルバムに仕上がっております。マイルスは相変わらずスタジオでは延々と演奏を繰り広げるだけで、その中からテオマセオが印象的な部分を抜粋してテープ編集したものがアルバムという形として発表されております。エレクトリックマイルスの作品はほとんどがこのアプローチによって創られております。

現代音楽的な音響も響くこの作品では最高にリリカルな美しい旋律が流れております。マイルスの作品中でも最高クラスの名盤であります。ジャズファンもロックファンもこのアルバムなら納得の一枚です。

In A Silent Way



[20060819]

Water Babies (Dlx) Water Babies (Dlx)
Miles Davis (2002/08/20)
Sony
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本格的なエレクトリックマイルスの時代に突入する前に紹介しなければならないアルバムがあります。ネフェルティティと同じセッションからのテイクとチックコリア、デイヴホランドが入ったセッションが収められたアルバムです。70年代後半になるとエレクトリックマイルスを完成させたマイルスは病気療養の為に長期にわたり不在の時代がありました。その穴埋めをする為に発表されたアルバムです。

マイルスから絶対的な信頼を得ていたテオマセオにより編集されたアウトテイク集になりますが、新作が望めない時代に置いては貴重な作品集となりました。前半の4曲がネフェルティティと同じセッションによるモードジャズ前回の作品です。没になっていたとはいえ、作品の精度は悪い訳ではなく、オリジナルアルバムにそぐわなかった為に没となっていたようです。此の時代のマイルスはソニーから自由にスタジオを使える権利を授かっておりましたので、膨大なセッションが残されている訳です。其れを編集、時には大胆なテープをカット&ペーストで繋ぎ合わせて作品化したテオマセオの手腕が発揮された作品でもあります。

1. Water Babies
2. Capricorn
3. Sweet Pea
4. Two Faced
5. Dual Mr. Anthony Tillmon Williams Process

此のアルバムでも再認識させられるのが、ウェインショーターのリリカルで繊細なプレイです。ほとんどの曲を手がけており、作曲能力を改めて確認させられます。 Sweet Peaだけ1969年の録音になっておりますが、此の時代はエレクトリックにどっぷり浸かっている時代です。そこでの黄金のクィンテッドでの録音というのも貴重なテイクだと思います。練習用に演奏していたにしては素晴らしい演奏です。チックコリアが加わった作品も、モードジャズとエレクトリックが微妙に合わさって不思議な響きをもたらしております。

これらの作品以外にもアウトテイク集はありますが、これからは、とりあえず本来の流れであるオリジナル作品集に立ち返りエレクトリックマイルスのいだいなる偉業を伝えていきます。オリジナルに加え、これらの作品も聴いて頂けるとマイルスの難解なエレクトリック時代の何らかの参考にはなると思います。現在の停滞している音楽界へ喝を入れるべき力が、此の時代のマイルスの作品には満ち溢れているのです。

[20060819]

Filles De Kilimanjaro (Dlx) Filles De Kilimanjaro (Dlx)
Miles Davis (2002/08/20)
Sony
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マイルス・イン・ザ・スカイの後のセッションが収められたアルバムです。ジャケットにはエレクトリックマイルスの重要人物ベティーデイヴィスが映されております。又Mademoiselle Marbyという曲は結婚前の名前メイブリーという名前で捧げられた曲です。

此のセッションの後に、クィンテッドのメンバーは自身のバンド結成のためマイルスの下を離れていきます。そこで集められたのがチックコリアとベースのデイヴホランドです。此のセッション以前にはミロスラフヴィトウスも招集されておりました。

1. Frelon Brun (Brown Hornet)
2. Tout de Suite
3. Petits Machins (Little Stuff)
4. Filles de Kilmanjaro
5. Mademoiselle Marby (Miss Marby)

此のセッションからはよりロック的なリズムへと近づいております。全曲マイルスの作曲というのも珍しいです。特にFilles de Kilmanjaroではラテンのフレイバーも感じられます。まだエレクトリックマイルスとしては小手調べ的な作品ですが、興味深い演奏が記録されております。

Petits Machinsではギルエヴァンスがアレンジャーとして起用されております。まだモードジャズ形態が引き継がれているようです。とにかく、60年代後半という時代はロックにおいても変革期でありましたが、ジャズ界においてもマイルスという帝王による大変革が起こった時代でもあります。コルトレーンの死によりモダンジャズは終わったのかもしれません。しかし、マイルスの死後モダンジャズリヴァイヴァルが起こっておりますので、形骸的ではありますが、現在もモダンジャズはスタイルとしては生き残っております。しかし此の時代唯一人ジャズの変革を求めたマイルスにより時代はジャズロック(当時は此の言葉しか存在しておりませんでした)からフュージュンの時代へと大きくシフトしていくのでした。

Mademoiselle Marbyという曲ですが、ベティーらしいソウルフルな曲に仕上げられています。ジャズには無かったベースラインです。チックコリアのプレイは明らかにハービーのものとは違います。マイルスはこれ以降いろんな人材を招集しては自身の追求しているものを具体化していく試練の旅へと身を委ねていく事となります。

[20060819]

Miles in the Sky Miles in the Sky
Miles Davis (1998/10/13)
Tristar
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マイルスがエレクトリックの時代へと入って行った第一弾はインアサイレントウェイですが、そこに辿り着くまでに多くの実験的なセッションを繰り返しておりました。此のアルバムはその最も初期のセッションを記録したものになりますので、此のアルバムから紹介していきます。アルバムとして発表されたのは後になりますが、テオマセオにより作品として編集されてアルバムとして世に出ました。

まずエレクトリッックを取り入れたいきさつを書きます。当時のマイルスの彼女、後に奥さんになる人ですが、ベティーデイヴィスの存在が一番の原因です。ジャズメンというのは白人へのコンプレックスから、成功した人はタキシードなどの正装をしてステージに立ッていました。このファッションをベティーからダサイと言われてしまったのです。当時60年代後半は正にフラワームーブメント真っ盛りの時代で、サイケデリックカルチャーが席巻しておりました。そこでベティーはマイルスにヒッピーファッションを着させ、ジミヘンを聴くように勧めます。マイルスにとってジミヘンの存在は青天の霹靂で、してやられたと悔しがります。そして時を同じくしてジェームスブラウンがファンクを完成させております。この黒人による新しいムーブメントに着目したマイルスはジャズにファンクとロックの融合を試みる実験を模索して行きます。ベティー自身もファンキーなソウルシンガーでありまして、かなりカッコイイいけてる女としてマイルスに影響を与えていたのです。

ネフェルティティ発表後、メンバーをスタジオに招集。そこにはグランドピアノの変わりにエレクトリックピアノ、ウッドベースの変わりにエレキベースが置かれておりました。ハービーハンコックにとってエレピはオモチャのような印象でしたが、弾いていくうちにその響きの面白さに魅了されていきます。しかしロンカーターはエレキベースの使用には断固拒否、このセッション以降バンドを離れていってしまいます。此のアルバムではウッドベースを使用しており、エレキベースも聴こえますが、ロンカーターが演奏している可能性は極めて低いです。クレジットではロンしか記載されておりませんが。

1. Stuff
2. Paraphernalia
3. Black Comedy
4. Country Son

全4曲ですが、アナログ盤では2枚組の容量です。エレクトリックマイルスの特徴としてギタリストの起用というのがあります。最初に招聘されたのがジョーベックですが、そのセッションは別のアルバムに収録されております。ここではジョージベンソンがフューチャーされております。後にAOR系で大御所になるベンソンですが、当時はウェスモンゴメリー風のギターを弾いておりました。しかしジョーもベンソンもマイルスの求めていたものとは違っており、これ以降呼ばれる事はありませんでした。

エレクトリックマイルス。もう一つの特徴はリズムの変革です。ファンクを取り入れますので、4ビートから8ビートへシフトします。しかしファンクは16ビートです。トニーウィリアムスはしっかり裏を叩いて16ビートも入れております。このリズムの変革が、これ以降のマイルスのテーマと言ってもいいでしょう。その実験性は90年代から起こるテクノやジャングル、ドラムンベースへと繋がる影響力を放っております。私が32ビートのドラムパターンを考える時にも参考にさせて頂いております。又マイルスはこの頃からブロー気味の力強いエキサイティングなプレイが続出してきます。

しかし此のアルバムではまだ革新的なものは創れておりません。まだ以前のジャズを引きずっているのです。ですからインアサイレントウェイが完成するまでこれらのセッションは封印されていたのです。いわば、どのようにしてエレクトリックマイルスへとなっていたのかのドキュメントがここにはあるのです。その流れを読み取る為には最適な作品となっております。

[20060818]

Nefertiti Nefertiti
Miles Davis (1998/10/13)
Sony Jazz
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黄金のクィンテッドとしては最後のスタジオオリジナルアルバムになります。其れだけに完成度は一番高いです。マイルススマイルをこの時期の最高傑作に上げる人もおりますが、音楽的な完成度はこちらが高いです。次回作のインアサイレントウェイに通じるマイルスの美意識はこのアルバムにて最高潮に達しております。ジャケットは前作と対となるマイルスが映されております。

1. Nefertiti
2. Fall
3. Hand Jive
4. Madness
5. Riot
6. Pinocchio

なんといってもウェインショーター作によるタイトル曲Nefertitiでは、ソロ楽器のトランペットとサックスが終止旋律を奏で、リズム楽器であるベース、ドラム、ピアノが終止アドリブを奏でるという逆転的な構成が斬新です。これは奇をてらったものではなく、古代エジプトの女王Nefertitiの波乱に満ちた人生を表現しているようです。尋常ではないのが、ドラムのトニーウィリアムスとベースのロンカーターです。特にMadnessでのプレイは他のジャズメンには真似出来ないようなプレイの連続です。しかし、しっかりジャズしているところが流石です。

マイルスとウェインショーターもいつにも増してリリカルで繊細なプレイが超人的ですらあります。ハービーハンコックには現代音楽にも通じるニュアンスが聴いてとれます。ジャズという音楽の中でこれだけの表現をやってのけたのですから、エレクトリック時代に行った流れは自然な流れ出合った事がこのアルバムでは読み取れます。エレクトリック時代ではビート感が変わっただけで、やっている事はそれほど違いは無いのです。

モダンジャズとして捉えられる内容は此のアルバムまでとなります。この後は、いよいよマイルスが禁断の扉を開いてしまいます。過去のジャズを愛するものからは罵られ、ロック小僧からは理解されずともマイルスは進むべき道を突き進んでゆくのです。そして一言SO WHAT!!と言い捨てるマイルスがそこにいるのです。

[20060817]

Sorcerer Sorcerer
Miles Davis (1998/10/13)
Sony Jazz
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マイルスはフリージャズには行かなかったけれども、フリージャズのスピリチュアルは誰よりも持っていた。それがモードジャズという枠の中で見事に開花したのがこの作品である。フリージャズはその時その時のプレイヤーの内面を表現する事を第一に考えられ、既成の音楽概念には拘束されずに吐露されるバイオリズムと言ってもいい。オーネットコールマンが言うには、誰かがソロを演奏し出したら、全員がそれを追いかけてバックアップする。又誰かがリードし出したらそれを全員がバックアップして行く。どこに辿り着くかは誰にも分からない冒険の旅へと旅立つのです。演奏家の自己満足と言われてもしようがないが、その瞬間を金を払って見に来る客がいれば、それはプロとして成り立つ。

マイルスの場合もこれに近い事をやっているが、同じモードを共有し、マイルスという演奏してもしなくても常に中心となるシンボルを共有していることが他のジャズメンとは違う事だ。それも、この黄金のクィンテッドの演奏力があっての事である。このあたりからエレクトリックの時代にかけて、マイルスは答えの無い方法論ばかりを提示して行く。音楽を聴いて答えを見いだす事すら厚かましい事であるが、人は理解する為に何らかしらの答えを要求する。ポップスの場合は明快なものがあるが、ジャズは分かりにくい部分もある。しかし、ハードバップまでは分かり易かった。でもモードやフリーの時代には、答えも一つではなくなってきているのだ。その為難解だとされるが、答えは人それぞれであっていいと思うし、答えを急ぐ必要も無い。此の心構えが出来ていれば、此のアルバムほど美しいアルバムはあるまい。それだけの内容を持った名盤であります。

1. Prince of Darkness
2. Pee Wee
3. Masqualero
4. Sorcerer
5. Limbo
6. Vonetta
7. Nothing Like You

ウェインショーターによる曲が4曲もあり、マイルスはとうとう曲を提供しないというところまできている。演奏そのものが、即興的な作曲なのである。Nothing Like Youだけ1962年に録音された歌もので、なぜこのような曲を入れているのかが謎とされておりますが、マイルスとテオマセオのみぞ知るであります。ジャケットは当時のマイルスの彼女女優のシシリー・タイソンであります。

Nothing Like Youは古い曲ではありますが、私は此のアルバムのカラーに合っていると思います。モード感覚も既にあるし、非常に面白いエンディングだと思います。賛否両論あれど、此のアルバムの価値は下がる事はありません。モードジャズが目指していたものは、本来このような抽象的な境地に至る事だったのかもしれません。

[20060816]

Miles Smiles Miles Smiles
Miles Davis (1998/10/13)
Sony Jazz
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Miles Smiles。何と言うタイトルでしょうか。あまり笑わないマイルスがジャケットで笑っているのです。デイビスは腰の手術を受け、さらに鎌状赤血球貧血という病気になり、母親が無くなっているのに。なぜマイルスは笑えたのか。その答えがこのアルバムにあります。モードジャズを開拓し、そして理想の演奏を収める事に成功したからに違いない。モードジャズが目指したもの、それはコードに縛られる事のない自由。メンバー全員がソリストである事。それらの意思にこの黄金のクィンテッドが応えられた作品として仕上がった悦びが笑顔をマイルスに与えたのだ。

1. Orbits
2. Circle
3. Footprints
4. Dolores
5. Freedom Jazz Dance
6. Gingerbread Boy

コードを鳴らす事を禁じ、モーダルな奏法に努めさせた演奏に全てのメンバーが応えている。特にドラムのトニーウィリアムスはリズムをキープしながらソリストであるという荒行をこなしている。それにフリージャズのような無秩序なものとは違いモードという秩序の下で全員がソリストであります。フリージャズに対する理解がまだ薄かった時代にこの作品は芸術的に昇華された作品として絶賛されました。マイルスがフリーに手を染める事無く、フリーに負けない自由を表現した名作として語り継がれる名盤です。

特にFootprintsのぞくぞくするようなベースラインからの攻防は凄まじいです。Orbits、Dolores、Freedom Jazz Danceもぎりぎりの秩序の中で自由を謳歌しております。Circleでは抽象画のような美しさもあります。まさに最強のクィンテッドです。エレクトリック時代にはメンバーが離れて行くため、此の緊張感を再現する苦労がでてきてしまいます。Gingerbread Boyではジャズというフォーマットの中でもこれだけのものが表現出来るという意思を感じられます。

今回動画がありましたので、どれほど凄まじいのか、その目でご確認下さい。癒しではない、覚醒の音楽がここにはあります。現代の私達が忘れかけているものです。

Footprints

[20060815]

E.S.P. E.S.P.
マイルス・デイヴィス (2000/10/12)
ソニーミュージックエンタテインメント
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イン・ベルリンというライブアルバムからウェインショーターがやっと参加してくる。そして最初のスタジオ録音がこの作品です。新人ばかり集めた此のバンドからは全員が此の後のジャズ界には無くてはならない巨匠まで成長して行く事になります。全員が他のバンドでプレイしていたのですが、マイルスが強引に引き抜いて結成しました。此のマイルス流はこの後も続きます。

ウェインショーターはコルトレーンやソニーロリンズとは違って、マイルスに近いリリカルなプレイが特徴です。作曲も出来るし、マイルスにとっては熱望していた人材です。此のアルバムではドラムのトニー以外のメンバーも作曲に加わっており、バンドとしてのサウンド創りが叶った作品となりました。

1. E.S.P.
2. Eighty-One
3. Little One
4. R.J.
5. Agitation
6. Iris
7. Mood

此のアルバムの発表当時はオーネットコールマンの提唱するフリージャズが流行始めていた頃です。マイルスも自由な演奏を渇望していましたが、フリーには行きませんでした。クールジャズという経歴もある通りマイルスは理論に基づいたアンサンブルが好きなのです。ですから益々モードジャズを極めていきます。オーネットコールマンによれば、フリーも理論に基づいたものだそうですが、マイルスは我が道を行きます。

ジャケットは又しても奥方が映っており、充実したマイルスが反映しているようです。音楽的には非常にスリリングで繊細で正にカインドオブブルーのその先にある音楽といった趣です。マイルスのプレイもいつも以上に挑戦的です。

これまでのビバップ、ハードバップにはない臭いが充満しております。第一期黄金のクィンテッドではモード奏法があまり理解されていない部分がありました。しかし、此の第二期黄金のクィンテッドでは若い分、新しい理論の吸収も早く、マイルスの求める音を出しているようです。しかし、当時を振り返ったハービーは、マイルスが言っている事を理解しないまま演奏していたそうです。それでもこれだけのプレイが出来てしまうのだから恐れ入ります。

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