1970年、ワイト島ミュージック・フェスティヴァルに出演した時の映像です。ウッドストックに続き、ロックの一大イヴェントとして有名なフェスティバルですが、ジャズ界から唯一エレクトリックマイルスバンドが殴り込みをかけました。
マイルス・デイヴィス(tp)、キース・ジャレット(el org)、チック・コリア(ep)、ジャック・ディジョネット(ds)、ゲイリー・バーツ(ss)、デイヴ・ホランド(eb)、アイアート・モレイラ(perc)というメンバーで収録曲は38分ほどの1曲ですが,実際にはこれまでに発表していた曲をメドレーで演奏しています。アドリブがほとんどなので、曲名はあってないようなものです。スタッフから曲目はと聴かれ、CALL IT ANYTHING。好きなようにつけてくれと言われ、CALL IT ANYTHINGという1曲としてクレジットされております。
此の時代の映像は貴重で興味深い内容です。ロックファンはラリっている人もいたでしょうが、大いに受けています。特にキースジャレットのファンキーな動きによるプレイは、このマイルスとのジャムからしか見れません。この頃から下を向きながらトランペットを吹くマイルスが印象的です。向き加減で音が変わるのですが、本来のトランペットの奏法としては邪道です。しかしもうマイルスは古きしきたりなど関係ないのです。自在な音使いこそが本意なのです。
この演奏の他に、マイルスに関わった人達のインタビューが盛り込まれております。この内容が又貴重な証言で、もう一つの楽しみなっております。そして誰もがマイルスの独特の口調を真似して喋るのが愛情を感じます。このステージにはザフーやジミヘンも参加しております。マイルスにはいつかジミヘンとのセッションをと夢見ていましたが、ジミの死によって叶わぬ夢となってしまいました。
当時このエレクトリックのセッションに参加した人達の生の声を聞けば、マイルスの
音楽がどれほど愛情に溢れていたのかが伺えてきます。エレクトリックマイルス。取っ付きにくい人は、この映像から入ってもいいのではないでしょうか。
CALL IT ANYTHING