エレクトリックマイルスの作品の中での最高傑作アルバムです。私的にはマイルスの発表したアルバムの中でも最高傑作の一枚です。しかしモダンジャズ時代のマイルスしか認めていない人にはそうはならないでしょうが。これまでマイルスが試作を繰り返してきた全ての集大成となっております。
アルバムジャケットのイメージは黒人のポップ感覚に溢れたアニメが使われており、ファンキーなイメージで語られるアルバムですが、それだけではありません。これまで何度も言ってきましたが、マイルスの
音楽には民族
音楽的な思想も入っており、このアルバムは間違いなく
サイケデリックミュージック作品なのです。それも最高に質の高いサイケアルバムです。この捉え方が出来ない人には意味不明なくらいにイカレタ
音楽に聴こえるでしょう。しかしこの
音楽は理解しなくても良いのです。自身に脈打つ細胞で感じて下さい。これは覚醒の
音楽なのです。全神経から溢れる目覚めの
音楽なのです。それを体感出来たとき、マイルスの言う精神的オルガズムスへと到達出来るのです。
1. On the Corner/New York Girl/Thinking of One Thing and Doing Another/Vote for Miles
2. Black Satin
3. One and One
4. Helen Butte/Mr. Freedom X
ジャックディジョネットとマイケルヘンダーソンが打ち出すリズムは明らかに
ファンクです。アフロアフリカンと言ってもいい。ドンアイラス、ムトゥーメ、ビリーハートが創り出すグルーブはラテンアメリカのデフォルメです。そしてこのアルバムの特徴のシタールとタブラが創り出すグルーブはインド音楽であり、
サイケデリックであり、フレーズサンプリングされたような音の断片はミニマルのようであり、トランスであり、テクノであり,ヒップホップ、ドラムンベース、ジャングルであります。そしてクラプトンやジミヘンを思わせるジョンマクラフリンのギターもかなり逝っています。フィードバックまでやってのけております。ジェフベックがブローバイブローで使ったフレーズが聴き取れますので、このアルバムからパクったものと推測出来ます。ハービーがゲストで洪水のようなエレピを弾きます。デイブリーブマン、カルロスガーネットのサックスにワウなどえエフェクティヴなトランペットをマイルスが吹く時にはもう昇天は近いです。
ローファイでイコライジングされた音の洪水は最初から最後まで延々と続いていきます。其れをカット&ペスト繋ぎ合わせたテオマセオの手腕も光ります。しかし、このアルバムでもマイルスはただ問いかけるのみで、答えは用意しておりません。ただ提示するのみです。全曲マイルスの作曲になります、それだけマイルスの思いが伝わってきます。テクノなどでは表現出来ない原子衝動のような生きたリズムパターンは狂おしいほど神経経路を刺激し続けます。ロックもヒップホップもつまらなく感じている私のような人間にはもってこいのカンフル剤です。
ジャンルを超越した名盤中の名盤です。しかしあくまでも黒人である事を主張したジャケット。マイルスの集大成と言っていいでしょう。ピンクフロイドのファーストは信号音のようなサイケ作品でしたが、それに近くも超えている
サイケデリックファンクジャズロックアルバムです。体全身で逝く事の悦びを男も知るべきである。
On the Corner