エレクトリックマイルスが到達した頂点。それがこのアガルタとパンゲアという2枚組の2つのライブアルバムです。どんなに素晴らしい曲でも演奏する人によって違ってくる。同じ人でもその日のコンディションによって違ってくる。又、バンド全体が絶好調というステージはめったにない。全てのプレイヤーが最高の演奏をして、マイルスが思い描くように演奏するという完成された演奏がこの2つのアルバムには奇跡的に収められている。しかもそれは日本での公演によるものなのである。
本来、ライブでもスタジオでもテオマセオがカット&ペーストによる編集を施す事が前提となって演奏が進んでいく。しかしこのステージではほとんど編集の必要がないくらい完璧な演奏が成されている。自分のバンドが思い通りに演奏をこなしていくというのはリーダーにとっては理想的な事だが、なかなかそうはうまくいかない。フランクザッパも素晴らしいミュージシャンを集めても旨くいかないジレンマに悩んでいた。それを解消する為にシンクラビアというモンスターマシンで憂さを晴らしていく事になる。マイルスもこれまで一流のミュージシャンを集めてきました。時には強引に引き抜いたりしておりましたが、なかなか全員が最高の演奏をする瞬間には立ち会っていなかった事でしょう。しかしその奇跡がこうしてアルバムとして残された事を我々は幸せにも聴く事が出来るのです。しかも、アナログ盤ではフェイドアウトしていた部分がCDでは完全収録されました。
ディスク11. Prelude, Pt. 1
2. Prelude, Pt. 2
3. Maiysha
ディスク2 1. Interlude
2. Theme From Jack Johnson
この奇跡の演奏をしたメンバーはドラムのアルフォスター、パーカッションのムトゥーメ、ベースのマイケルヘンダーソン、ピートコージーとレジールーカスの二人のギタリスト。サックスのソニーフォーチュン、そして帝王マイルスデイヴィスです。この完璧な演奏にはもはや邪悪で凶暴な怪物は存在しておりません。見事に調和が取れたポリリズムとマイルスの呼吸と全員が一つになったグルーヴが存在しているのです。私個人としてはアトフィルモアやライブイーブルのような凶悪なサウンドが好きですが、このアルバムは誰にでも分かるくらい鮮明な調和があり、エレクトリックマイルスを理解出来ない人でも気に入ってくれると思います。
アルバムジャケットは日本人の横尾忠則が担当しており、スリランカの伝説の地底都市アガルタを描いているのだそうです。ニューヨークの摩天楼のようではありますが。唯残念なのが動画としては残っていない事です。この日の演奏の動画を持っている人はYOU TUBEに投稿して下さい。しかし、エレクトリックマイルスの最後を飾るに相応しい名盤であります。