2009年のアルバムです。フォークトロニカとしての形も定まり始めています。それに加えてポップで親しみ易い作品になっています。サンプリング素材をちりばめたリズムのアヴァンギャルドな雰囲気とポップな旋律、アヴァンギャルドポップでフォーク色も強めなのにテクノを感じる。当時はかなり不思議なスタイルだったと思いますが、このアナログの暖かさとデジタルのぶっきらぼうな雰囲気の融合はやがて定着してきます。
1. Cantariola
2. Harry El Sucio
3. After All
4. A Flower On His Bonnet, A Mirror In His Hand
5. Post-Illas
6. Plumazul
7. Long Day
8. Welcome To La Siesta
9. Hemos Fracasado
10. Adioses
フォークトロニカにも様々なスタイルがあって、当初はエレクトロニカにアコースティック楽器のサンプリングを使ったテクノ寄りのスタイルで認識されていきますが、フォーク強めのスタイルもあり、その混ざり具合の塩梅でそれぞれの個性があります。日常的なアンビエント感、環境
音楽に近い音響でアコースティック感が全面に出ていながら、エレクトロもしっかり主張しているこのアルバムは、その塩梅のバランスが良い感じですが、バランスが良すぎてデジタルとアナログの対照的な音の混じり合わない微妙な違和感が不思議な世界を作り出しています。
女性ボーカルのアンニュイな感じも雰囲気作りに役立っています。自分も歌っているのか、何を言っているのか分からないような弱いボーカルは、日本のインディーズにもよくある雰囲気で、80年代のオタクな感じがします。普通はリズムに使わないようなサンプリング音源を切り貼りするようにパッチワークさせてリズムを作っているので、アコースティック楽器よりもそちらに耳が行ってしまいますが、アコースティックのほのぼのとした雰囲気が緊張感を緩和させる役割になっていて、緊張感と緩和の絶妙なバランスも生まれています。
Cantariolas