84年に制作された6つの室内楽のためのDérive 1とそれ以降手を加えた11の室内楽のDérive 2が収録されています。IRCAMを開発指定からは、積極的に室内楽の演奏とIRCAMによる残響処理を施した作品を残しています。普通に聴いていると普通の室内楽のように聴こえますが、繊細な残響処理が施されています。ロックアルバムを聴いているものにとっては当たり前の処理でも、クラシック
音楽の生演奏にこのような機械的な処理が施されているのは一種の冒涜であります。それを作品の意義として制作しているのです。
1. Le Marteau sans matre
2. Dérive 1 & 2
バイオリンに幻想的なイメージを持たせたくても、クラシックでは旋律でそれを表現するしか方法はありませんでした。残響処理によりエフェクティヴな処理を施す事によって、幻想的なイメージはより具体的になりますが、コンサートにおいて、観客の前でそのような処理を施す事はクラシック
音楽の概念ではありません。そういう装置が無かったと言うのもありますが、まずマイクで音を拾うと言う概念もレコードが誕生するまではありませんでした。
しかし、クラシックの演奏でもレコーディングではマイクで音を拾います。しかし、観客と同じ環境で再現する事を心がけているので、そこにエフェクト処理を施すのはほんのわずかな修正をする為だけです。しかし、ブーレーズはコンサートを聴きにきている観客に向けてもエフェクト処理した音を場内に配置した6つのスピーカーを通してステレオで聴かせると言う装置を開発したのです。
現代音楽ならではの感覚ですが、それにより、それまでとは違った室内楽を体験する事が出来るようになったのです。
Dérive 1