イギリスのシンガーソングライターConrad Lambertの一人プロジェクトMerzの99年のファーストアルバムです。94年にはConrad Lambert名義ですでにデビューしていましたが、さほど売れずMerzとして再起しています。一人で演奏、プログラミング、歌をこなすマルチミュージシャンで、プログラミング的にはブレイクビーツ、ドラムンベース的ですが、アコースティック楽器を入れたり、既にフォークトロニカの片鱗を見せています。
1. Many Weathers Apart
2. Engine Heart
3. Lotus
4. Forsake
5. Lovely Daughter
6. CC Conscious
7. Starlight Night
8. Asleep
9. Blues Became
10. A.M. (Good Morning)
テクノミュージシャンというよりはシンガーソングライターであり、曲がしっかり作曲されていて、歌も表現力もポップミュージシャンのレベルで、プログラミングはあくまでも時代的な手法という印象です。なのでこの作品だけEpic からメジャーリリースになっています。ただ、時代的に早すぎたのか、この後はインディーズ、その先には自主制作にまで行ってしまいます。
まず特徴としてはシンガーとしての実力派でありますが、ネオアコ的な雰囲気の歌です。作曲家としても申し分なく、テクノなアレンジではありますが、フュージョン、ポップス、ロックとしての完成度の高いものになっています。しかし90年代はオルタナ、ハウスなど、曲としては未完成な感じの方が売れていましので、しっかり作曲されていると古臭い印象を与えていました。ヒップホップ的な中途半端な感じが受けていたのです。それでも
音楽としての完成度とテクノロジーを両立させるという手法は、古臭いどころか、かなり先を行っていると思います。現在でもここまで完成度の高いものは少ないです。より抽象的になるか、より
音楽として完結するかですが、当時としてはかなり斬新な試みだったと思います。しかし売れないというのは皮肉なものです。
Many Weathers Apart